李大統領がAPECサミットで演説する様子

2025年アジア太平洋経済協力会議（APEC）サミットは慶州で閉幕し、いくつかの明確なメッセージと慎重ながらも前向きな一歩を残した。開催国である韓国は、人工知能（AI）の台頭と高齢化社会という二つの喫緊の課題に焦点を当てた。

人工知能に関する共同計画
最大の成果の一つは「APEC人工知能イニシアチブ」の立ち上げに合意したことである。各国の首脳は、安全で透明性のあるAI活用のために協力し、テスト、ガバナンス、トレーニングに関する共通基準を策定することを約束した。また、各国の閣僚に対し、中小企業がAIツールをより効果的に導入できる具体的な方法を来年までに提示するよう指示した。慎重な表現ではあったが、この分野は各国が足並みを揃え、空論に終わらなかった数少ない新しい領域の一つである。

計画の次に来るもの
言葉から行動へと移すために、APECの各経済体は新しいAIイニシアチブの下で専門の作業部会を設置することで合意した。これらのチームは、AIのテスト、監査、倫理的利用に関する共通の方法を含む安全性と透明性の基準を策定する予定である。また、中小企業が責任を持って競争力のある形でAIを導入できるよう支援するための地域トレーニングプログラムも構築する計画である。今後1年間で、加盟国はデータガバナンスの枠組みを試験運用し、AI製品の国境を越えた認証制度を検討し、地域全体で一貫した実践基盤を築くことを目指す。

人口変動への対応
各国首脳は、人口減少と労働力不足に対処するための枠組みを設けることにも合意した。多くのAPEC加盟国では急速な高齢化が進んでおり、年金制度や介護体制への負担が増している。各国はデータや政策、戦略を共有し、保育支援から労働移動の促進まで、国境を越えて労働力のバランスを取ることを目指している。

さらなる取り組み
人口問題により直接的に取り組むため、加盟国は一連の協力ステップを策定した。まず、人口動態や労働移動に関する共同研究を実施し、その後、保育、高齢者介護、労働参加に焦点を当てた政策交流を行う。実証プロジェクトでは、各国間で柔軟な労働シェアリングの仕組みを試し、高齢労働者の再教育や熟練労働者の受け入れを促進するインセンティブを検討する予定である。目的は、人口の高齢化が進む中でも地域の経済活力を維持できるよう、柔軟で拡張可能な政策ツールを構築することにある。

貿易の安定とグリーン成長
もう一つの目標は、世界の貿易システムの安定を維持することである。最終声明では、世界貿易機関（WTO）を巡る対立が続く中でも「自由で開かれた貿易」への支持を再確認した。多くの参加者が、WTO改革の加速とデジタル貿易のルール整備を求めた。環境問題も議題の中心に据えられ、各国はグリーン技術や重要資源の供給網強化における協力を強めることで一致した。これらの約束は幅広いが、APECの21加盟国が世界のGDPの約3分の2を占めているため、投資動向に影響を与える可能性がある。

政治と静かな競争
今回のサミットは、世界的な政治状況をも映し出した。中国の習近平国家主席は、新たな国際的AIガバナンス機関の設立を提案し、ルールを「従う側」ではなく「形作る側」になるという北京の意図を強調した。アメリカは今年、下級レベルの代表団を派遣し、CEOサミットやサイドミーティングを通じてビジネス連携に重点を置いた。開催国の韓国は、政治的な対立ではなく実務的な進展に焦点を当てようと努め、このバランス感覚が予想以上に穏やかな雰囲気を生み出した。

ビジネス界の主役登場
主要会議の周辺では、企業のリーダーたちが注目を集めた。技術、クラウドインフラ、半導体協力に関する新たな投資の約束が相次いだ。APECはしばしば記念撮影で終わることが多いが、今年の集まりはビジネスと政策が歩調を合わせ始めたという印象を残した。

静かな成功
最終的に、APEC 2025は大規模な突破口を開いたわけではないが、実現可能な進展へと明確に方向転換したことを示した。人工知能と人口対応力を中心に据えることで、加盟経済体は今後10年間の地域的な成長と協力の基盤を築いた。新しいAIおよび人口政策の取り組みが来年、実際の協力と具体的成果を生むなら、このサミットは単なる議論の場ではなく、転換点として記憶されるだろう。

サミットの非公式なハイライト

[出典：https://edition.cnn.com/2025/10/31/tech/south-korea-nvidia-apec-chicken-intl-hnk]

公式の写真撮影や政策文書を離れ、今年のAPECで最も話題になった瞬間は会場の外で起こった。NVIDIAのジェンセン・フアン、サムスンの李在鎔、そして現代自動車の鄭義宣がソウルのチキン店に現れ、まるで韓国ドラマの一場面のような深夜の食事を楽しんだ。サクサクのフライドチキンやチーズボール、冷えたビールを囲みながら3人は笑い、焼酎で乾杯し、最後には店中の客の食事代を静かに支払って周囲を驚かせた。未来を語る演説に満ちた1週間の中で、この光景は「良い食事と仲間の力」を思い出させる温かいひとときとなった。